かぴばら先生は語る

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小説、アニメ、マンガ、文学からエンタメまで色々と話せたらと思い、ブログを開設。興味のある方はぜひご覧になってください。

馬鹿々々しくもド直球の熱い青春「鴨川ホルモー」の絶大エネルギー

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万城目学、この作家どうにも捉え所がなく、理解しにくい作品ばかりを描かれる。

――のはずだ。

そう、そのはずなのだ。

なのに何故だろう? なぜ私たちはこうも彼の作品を愛するのだろうか?

それはおそらく彼の作品から滲み出る、否、溢れんばかりのエネルギーに圧倒され、私たちはついつい彼の作品を愛せざるを得ないのだ。

読んでしまう。読んでしまうんだよなあ~。

処女作の「鴨川ホルモー」と云う題名からこの作家の捉えどころのなさ、おかしさ、莫迦にしている感じがひしひしと伝わってくる。

しかし本編を読んでみたら……

「おお! こんな素晴らしい小説が! なんという緻密で繊細な文章なんだ!」

と心変わりすることは一切としてない。

本編を読んだところでその馬鹿々々しさは払拭しようのないくらいに不動のものとなる。

内容もおかしさ100%である。

ホルモーとは何ぞや? 鬼を従えて戦う? お前何でちょんまげなんだよ!

読み進めていけばいくほどにパニックは大きくなる。

なのに面白い。

これはもう作者を疑うより前に自分を疑いますよ。

何で私はこの作品を読んでニヤニヤしてページを繰り、悲しくなってため息をつき、淋しくなってまたもため息をつき、そして可笑しくって嬉々となるのだろうか?

この作品には絶対に魔物が棲んでいるのだ。

いや違う。

そこには意地悪な神がいる。そして鬼がいる。

ここまで記事を読んで「こいつ何をぬかしとんの? 容量得んな? はっきりしゃべれや!」と思っている常識ある(おそらく平々凡々とした生活を何の反発もなく過ごしている方なのでしょう)方々もいるでしょう。

しかしこの作品はそんな常識では測れませんよ。

だからおかしいんです。

だから面白いんです。

この作品を読んで理解できない人もおられましょう。

しかしそれも仕様のないことです。

皆が皆、絶賛を巻き起こす作品はありませんからね。

けれど、そのうえで私はこの作品を紹介します。

この作品は娯楽小説界の天才が書いたのです。

と云うことでいつもの語り口調とは少々異なった文体でしゃべってしまいましたが、ご安心を! ここからはまじめに紹介していきます。

では、説明していきましょう!

鴨川ホルモー

鴨川ホルモー (角川文庫)

鴨川ホルモー (角川文庫)

 

このごろ都にはやるもの、勧誘、貧乏、一目ぼれ。葵祭の帰り道、ふと渡されたビラ一枚。腹を空かせた新入生、文句に誘われノコノコと、出向いた先で見たものは、世にも華麗な女(鼻)でした。このごろ都にはやるもの、協定、合戦、片思い。祇園祭宵山に、待ち構えるは、いざ「ホルモー」。「ホルモン」ではない、是れ「ホルモー」。戦いのときは訪れて、大路小路にときの声。恋に、戦に、チョンマゲに、若者たちは闊歩して、魑魅魍魎は跋扈する。京都の街に巻き起こる、疾風怒涛の狂乱絵巻。都大路に鳴り響く、伝説誕生のファンファーレ。前代未聞の娯楽大作、碁盤の目をした夢芝居。「鴨川ホルモー」ここにあり。

 
と云うのがあらすじ。

まあ、これで内容を理解した人はそれこそ天才です。

二年の浪人生活を経てやっとのことで京大に入学できた主人公の安倍。

その安倍が春の葵祭で牛車引きのアルバイトをし、報酬をもらった後一人の帰国子女で同じ京大生の高村と出会う。

この高村が後のちょんまげ野郎である(と云ったところで何のことかさっぱりの方が大勢いることはお馬鹿な私でも察することができる。まあ本編を読めば分かるとしか云いようがない)

そんな高村と少々雑談をしていた時だ。

これが「ホルモー」とのファーストコンタクトであったことは後々に彼らが一番に理解し後悔する。

二人の男女がとあるサークルの新歓でビラを配りにきた。

そのサークル名が「京大青竜会

勧誘文句は「一緒にENJOYしませんか?」

如何にも胡散臭い。

しかし彼らは思い当たる何かがあったのか、それとも何か誘われるものがあったのか、「京大青竜会」の新歓コンパに向かうのだった。

そして彼らの逃れられない「ホルモー」の第一歩は踏み出された。

少しだけ皆さんの疑問を氷解していきましょう。と云っても一つしか答えませんが。

では一つだけ。

「ホルモー」とは? あの「ホルモン」との関係性が? について。


お答えします。

「ホルモン」とは一切関係ございません。

「ホルモー」とはこの現実世界とは異なった世界、異界の者「鬼」を操って相手側の「鬼」と戦わせて勝敗を競うと云うものです。

一人につき所持している「鬼」の数は百匹以上。

その「鬼」をすべて失った者は恥ずかしげもなく大声で、

「ホルモォォォォ――――!!!」

と叫ばなければいけない。

この叫びは逃れられない。我慢しようとそんなものは無駄に終わる。

叫ばざるを得ないのです。

もっと詳しく知りたい方は本編で確認してください。

(結局氷解とは何ぞ……?)

読んだ感想


「こうも愛おしい作品になろうとは」

読み終わった私がまず思ったことです。

読み始めた当初は「何だこの変てこなタイトルは! 何だこの馬鹿々々しい内容は!」こんな感じでした。

しかし読み終わったとき当初思っていたそんな感想は一瞬にして霧消してしまいました。

この作品はコメディとして最高の娯楽作品だと思います。しかし同時に最高の青春小説でもあるのです。

主人公が「京大青竜会」に居続ける理由は一目惚れした早良さんと一緒に居続けたいという純粋な気持ち。

そして他にも様々で且つ純粋な気持ちを思いはせる人物がたくさんいるのです。

ちょんまげ野郎の高村もなんだかんだ悩みに悩んで最初の方ではこいつ自殺とかしねぇだろうな? リストカットの痕があったら終わりだ、なんて思っていましたし。

その他にも早良さんと云う主人公が恋い焦がれる人物、こいつも最終的にやばい奴だったなあ。

そして楠木さん。この子が曲者です。最後の最後で彼女の気持ちを知ったときにはえも云われない感情に襲われました。


鴨川ホルモー」是非ご一読を!

最後に


恐らく今回の本紹介は駄文の駄文、めちゃくちゃになってしまっていると思います。

誠意をもって謝罪させていただきます。

しかしこれも仕方のないことなのです。

それほどにこの作品は説明しにくい。

本編を読まなければこの作品の良さと云うものはどうしたって感じられません。

ですから是非読んでみてください!

ここまで読んでくださった方有難うございました!

それでは( ´Д`)ノ~バイバイ

鴨川ホルモー (角川文庫)

鴨川ホルモー (角川文庫)

 
鴨川ホルモー

鴨川ホルモー

 

読書家じゃないあなたも!おすすめ青春ライトノベル【ラノベ5選】

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今回は一作品にとどまらずドドンッ、と5作品一気にご紹介していきます!
(本当は10作品のつもりが紹介文が予想以上に長くなってしまったのです)

紹介するカテゴリーは青春ライトノベル

普段読書をしない方でもとっつきやすく比較的途中であきらめず最後まで読めてしまうような作品をご紹介できればと思います。

選考理由は読みやすさはもちろん、内容の親密性などを自分なりに考えてみました。

ほぼメジャータイトルが勢ぞろいですがそこは「人気は正義、多くの人から読まれているものが面白くないはずがない!」と云うことで、ご理解をお願いします。

それでは紹介していきます! ※これはランキングではありません。

1「アオイハルノスベテ」

輪月高校に入学した生徒だけが発症する不思議な力―“シンドローム”。その力で横須賀浩人は、強制的に時間を巻き戻されてしまった。どうしてこんな状況になったのか、誰の力が原因なのかも分からない。残っていたのはかすかな記憶だけ。そんな中で浩人が掲げた目標は―白紙になった三年間を、最高の高校生活としてやり直すこと!?幼なじみやマニアックな友人、さらに近寄りがたい美少女との接触からすべてが始まる、オールデイズ青春グラフィティ!!  

 
クラス内カーストから派生する交友関係。

その関係にどこか息苦しさを感じながらも仕方ないと諦めて自分の立ち位置を気にしながら学校生活を送る。

そう云うのって実際には学校生活で無意識にそんな振舞いをしてしまうものですよね。

小説で改めてそれを言葉として咀嚼すると、ああそうだよな、と共感してしまう。

この小説はその青春小説特有の息苦しさや不安などを描きながらもそこに全く別の要素、ガジェットとして「特殊能力」と云うものを加えることによってただの青春物語からの飛躍を成功させています。

最近話題の「サクラダリセット」の様な世界観であり物語でもあるんですが、やはり全く同じと云う訳でもありません。

差別化するのであれば「サクラダリセット」は大人の介入がある作品。

対して「アオイハルノスベテ」は一貫して「学生たちの物語」なんです。

学生の中でしか能力は宿りませんし、そしてその能力に関する管理や指導もやはり生徒間で行われるわけです。

そのことによって普通の学生同士の交友関係を超えた何か異質な、全く別の交友関係、が出来上がってしまう。

今迄の青春小説とは少々変わった作品かもしれません。

それっぽく云うのであれば、既存の青春小説に全く異質な要素を加えることによって今迄に無い青春小説としての位置を獲得した。

と云う感じでしょうか。

と云っても甘酸っぱい恋愛もあるし、ドキドキの物語展開をみせますし、そんな肩に力を加える必要はありません。

と云うことで「アオイハルノスベテ」、是非読んでみてください。

2「下読み男子と投稿女子~優しい空が見た、内気な海の話。」

平凡な高校生の青は、実はラノベ新人賞の下読みのエキスパートだ。そんな彼は、ある日応募原稿の中に、同じクラスの氷ノ宮氷雪の作品を見つける。“氷の淑女”と呼ばれる孤高の少女が、フォント変えや顔文字だらけのラノベを書いて投稿している!?驚く青だが、その後ひょんなことから彼女の投稿作にアドバイスをすることに。評価シートに傷つく氷雪をあたたかく導き、世界観、キャラ設定、プロットと、順調に進んでいくが…。爽やかな青春創作ストーリー!

 
ラノベ創作を通して二人の関係が徐々に縮まっていくのは読んでいて微笑ましいですね。

青春時代に何か一つのことに熱中し、努力して、しかしだからと云って結果がついてくるわけではなくて……

そう云う経験ありますよね?

私はあります。だから少なくとも現実で成し遂げられなかったことを小説に登場するキャラクターたちには成功を収めてほしい。

いわゆる感情移入ですね。

だからこそ物語内で主人公たちが辛いときは読者である自分だって辛いし、主人公たちが笑顔の時は私だって笑顔になるのです。

いろんな苦難や葛藤、屈託を経て成功をを得るのです!

この作品はついつい登場人物たちを応援したくなる、そんな小説です!

度々作品内で小説のアイデア出しや構成の仕方、文章の表現などがライトな文章で分かりやすく書かれているので今迄思っていた小説創作の観念的な部分が刺激されるかもしれませんね。

小説家を目指している方にはほんの少し参考になったりする部分もあったりするかも。

こちらも是非読んでみてください!

3「いでおろーぐ!

「恋愛を放棄せよ!すべての恋愛感情は幻想である!」雪の降るクリスマス・イヴ、カップルだらけの渋谷。街の様子に僻易していた非リア充の高校生・高砂は、雑踏に向かってそんなとんでもない演説をする少女に出会った。彼女の正体は、同じクラスの目立たない少女、領家薫。演説に同調した高砂は「リア充爆発しろ!」との想いを胸に、彼女が議長を務める“反恋愛主義青年同盟部”の活動に参加する。やがて集まった仲間とともに『バレンタイン粉砕闘争』への工作を着々と進めるのだが―!?「我々は2月14日、バレンタイン・デーを、粉砕する!」


この作品を読んだ最初の感想は「いいアイデアを見つけおって。面白じゃないか!」でした。

いやあ、脱帽でした。

恋愛を放棄させるため、恋愛は幻想であると理解させるために「反恋愛主義青年同盟部」を結成していき、最終的にきたるバレンタインを撲滅するために同盟部は計画を企てる。

思いつきそうで思いつかないアイデアですね。

素晴らしい!

内容も期待通りのもの。

ブコメを否定しながら主人公にいつしか惹かれていくヒロインの領家 薫(りょうけ かおる)。

恋愛に屈するのか? それとも恋愛に抗い続けるのか?

主人公、ヒロイン以外も個性的なキャラクターがたくさん登場します。

男子生徒から女神と崇められる胸が大きな2年生、神明 茜(しんめい あかね)

第二美術部の部員。小柄で朴訥。しかし中身はレズビアン、西堀 優(にしぼり ゆう)

テニス部の王子様! しかしロリコン……っておい! 瀬ケ崎 渉(せがさき わたる)

そんな登場人物たちが織り成す反ラブコメ物語! おすすめです!

4「ゲーマーズ!

趣味はゲーム。それ以外には目立った特徴もなく、かといって平凡な日常を愛していたりもしない、真の意味でのモブキャラぼっち高校生、雨野景太。そんな彼が突然、生徒会でハーレムを宣言したり、ゲームであっても遊びではないMMO世界に閉じ込められたりするわけでもなかったのだが…。「…私に付き合って、ゲーム部に、入ってみない?」学園一の美少女でゲーム部の部長、天道花憐に声をかけられるという驚くほどのラブコメテンプレ展開に遭遇。ゲーム好きな美少女たちとのラブコメの始まりかと思いきや!?こじらせゲーマーたちによるすれ違い錯綜青春ラブコメスタート!

 
アニメ化決定! おめでとうございます!

と云う訳で「ゲーマーズ!」です。

この作品はもちろんラブコメするのですが、そんな、はい主人公とヒロインが付き合いました、めでたしめでたし、とはうまくいきません!

みんながみんな真剣に相手のことを考えるあまり、相手への想いを勘違いしたり、暴走したり、もう関係がこじれて、もつれて、どうなるんだー! って感じです。

どんだけすれ違うんだよ、こいつら!

錯綜ストーリーにもほどがあるぞ!

しかしそれが面白んだから、葵せきな先生はすごい!

ブコメだけでなくてゲームへの想い、考え方、そこにも注目してほしいですね。

いろんな考えがあっていろんな意見がある。それを一蹴する権利なんて誰にもない。

自分が本当に楽しいって思えるならそのスタンスは貫くべき、そんなことを語っていたり。

是非読んでみてください!

5「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。

孤独に負けず。友達もなく、彼女もなく。青春を謳歌するクラスメイトを見れば「あいつらは嘘つきだ。欺瞞だ。爆発しろ」とつぶやき、将来の夢はと聞かれれば「働かないこと」とのたまう―そんなひねくれ高校生・八幡が生活指導の先生に連れてこられたのは、学校一の美少女・雪乃が所属する「奉仕部」。さえない俺がひょんなことから美少女と出会い…どう考えてもラブコメ展開!?と思いきや、雪乃と八幡の残念な性格がどうしてもそれを許さない!繰り広げられる間違いだらけの青春模様―俺の青春、どうしてこうなった。

 
これはもういわずもがなの有名作になってしまいましたね。

ラノベ界隈では知らない人はいないのではないでしょうか。

このライトノベルがすごい! 3年連続作品部門1位!

これは快挙でしたね。

内容は読んでいて決して快感を覚えるような内容ではありません。(いや、私なんかはこれが快感なんですが)

主人公が悪をやっつけてヒーローになる、みたいな。

そう云うのを真っ向から否定しているのがこの作品。

捻くれていたり、拗らせてしまっている中高生のみなさんには大好物ではないでしょうか。

それに内容もさることながらこの作品がそれ以上の栄誉を得ている一番の要因は矢張り「文章」でしょう。

読んでいてつっかえることも無くそれでいてただ軽いだけの文体じゃない。

読んだ感がある、とでも表現しましょうか。

そう云う感覚に襲われます。

本当に文章が素晴らしい。

何でこう軽快でありながらも重みを含ませられるような文章が書けるんだろうか。

すごいなあ。

と云うことで「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」読んでみてください!

最後に


どうですか読んでみたいと思った作品はありましたでしょうか?

もう読んでしまっているって方ももう一度読み返したらまた新たな発見があるかもしれません。

と云う訳で青春ライトノベル5作品の紹介でした!

ここまで読んでくださった方有難うございます。

それでは(@^^)/~~~

おすすめミステリー、メフィスト賞受賞作「冷たい校舎の時は止まる」

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辻村深月さんと云えば今やいわずもがなの有名作家さんです。

「ツナグ」では吉川英治新人賞を、「鍵のない夢を見る」では直木三十五賞を受賞されている実力派です。

ここ数年には本屋大賞のノミネートも度々されています。

今までの栄光、そしてまだまだこれからも期待されている辻村深月さん。

そんな辻村深月作品から今回紹介するのは辻村さんの処女作にしてメフィスト賞受賞作、

「冷たい校舎の時は止まる」です!

処女作だというのに文庫本にして上下巻。一巻、約600ページの大長編!

これは読むしかありません。

詳しく紹介していきます!

「冷たい校舎の時は止まる」

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)

 
冷たい校舎の時は止まる(下) (講談社文庫)

冷たい校舎の時は止まる(下) (講談社文庫)

 


ある雪が降る冬の日、受験を控えた高校生の彼ら彼女らは集まるべくして集まった。

その日は朝の通学路からおかしかった。

いつもこの時間帯は通学のために道路が学生でひしめき合っているはずなのに、今朝は彼ら以外誰もいなかった。

学校に行ってみるとそこには仲良し同士の8人の学生しか集まっていなかった。

他の教室を見てももぬけの殻。

授業を知らせるチャイムが鳴っても一向にほかの学生は来なかった。

異変に気付き始めた8人の学生は学校からの脱出を試みるもそれは無駄に終わった。

昇降口のドアを開けようにもドアノブ自体が回らない。

時計は何故か5時53分で止まっている。

学生たちは最初担任教師の榊のイタズラだと思っていた。

しかしその後尋常ではない出来事が次々と起こってそして8人はある仮説に行き着く。

忘れていた事実を思い出す。

文化祭最終日、同級生の誰かが屋上から投身自殺をした。

その自殺した人物がこの異様な空間を作ったのではないか?

凍り付く校舎の中、8人の学生は顔も名前も忘れてしまった同級生のことを思い出す。

そして一人一人と消えていく……

読んだ感想


定番のクローズドサークルもの! そして青春ミステリー!

これだけでワクワクしてしまいますね。

そんな今作、ページ数が多すぎて最初は途中で辟易としてしまうかとも思ったんですが、それは杞憂でしたね。

読み始めていつの間にかページを捲ればそのつぎのページも早く捲りたくなっているんです。

そして一気に読み終えてしまう。

物語の内容が一人一人の登場人物に各章丁寧に焦点を合わせて描いており、そのことによってストーリー自体もとても重厚的な作品となっている。

素晴らしい!

既存のクローズドサークルでは犯人を当てるのが普通なのですがこの作品はなんと、「死んだ人」を探すんですね。

文化祭の最終日、自殺した同級生。

この8人の中にその人物が?

突然回りだした時計。しかしそれには理由があって……

決まって時計の針が5時53分を指すと一人一人と消えていく。

消えていく人物が直前に見た犯人の顔。

そして思い出される自分の気持ち。

おすすめミステリー「冷たい校舎の時は止まる」でした!

最後に


ここまで読んでくださった方ありがとうございます!

それでは今回はここまでです。

( ´Д`)ノ~バイバイ 

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)

 
冷たい校舎の時は止まる(下) (講談社文庫)

冷たい校舎の時は止まる(下) (講談社文庫)

 

おすすめSFファンタジー「ペンギン・ハイウェイ」で不思議な冒険

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森見登美彦さんと云えば腐れ大学生の下らない物語を文語調の文体で面白おかしく描く作家さんとして読書家界隈では有名ですが、今回紹介するのはそんな今まで思っていた森見作品とは一風変わった小説です。

第31回日本SF大賞受賞作品、「ペンギン・ハイウェイ」について今回は紹介したいと思います。

高校生の夏、期末テスト期間中で本来ならテスト勉強に打ち込まなければいけなかったんですが、ついつい気になって勉強そっちのけでこの作品を最後まで読んだことを思い出します。

最後まで読み終わった後は様々な感慨が濁流のように自分に押し寄せて結局読み終わってもテスト勉強には身が入りませんでした(笑)

いい思い出です。

そんな「ペンギン・ハイウェイ」詳しく紹介していきます!

ペンギン・ハイウェイ

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

 

ぼくはまだ小学校の四年生だが、もう大人に負けないいろんなことを知っている。毎日たくさん本を読むからだ。ある日、ぼくが住む郊外の街に、突然ペンギンたちが現れた。このおかしな事件に歯科医院のお姉さんの不思議な力が関わっていることを知ったぼくは、その謎を研究することにしたーー。少年が目にする世界は、毎日無限に広がっていく。第31回日本SF大賞受賞作。解説・萩尾望都

 
と云うのが文庫本裏表紙のあらすじ。

主人公、小学四年生のアオヤマ少年の住んでいる街のとある空き地に突如としてペンギンが現れました。

そして空き缶をペンギンに変えている歯科医院のお姉さんを目撃するアオヤマ少年。

不思議なことがあふれた街を研究しようと奮闘するアオヤマ少年たちのワクワクする冒険!

小学生でありながら大人であろうとするアオヤマ少年の純粋でひたむきな思いに心が揺さぶられます。

こういった純朴な気持ちと云うものを見ると何だか感動してしまいます。

気になった方は読んでみてください。

読んだ感想


主人公のアオヤマ少年はお姉さんのことが気になっているんですね。

気になるというとどんな感情なのでしょうか。

やっぱり恋愛? それとも憧憬?

似ているようで違う感情とは得てしていっぱいあります。

今作のアオヤマ少年がお姉さんへ向ける感情もどうなのでしょうか?

不思議な力を持っていたり、ほかの大人の人とは一線を画す、また違った大人の雰囲気を醸し出す歯科医院のお姉さん。そんなお姉さんにアオヤマ少年はあこがれているようにも見えますが……

対して小学生なりにもそれは恋とも呼べる感情を向けているようにも見えます。

それら様々なことを推察できるアオヤマ少年の心情はしかし一貫してどれも純朴です。

そんなひたむきなアオヤマ少年を見ていると読んでいるこちらも心が洗われた様な感覚を感じました(笑)

アオヤマ少年の周りにはいろいろな不思議な出来事が起きます。

そんな不思議な出来事を仲間のみんなと一緒に研究と題して冒険をしていく。

ワクワクの冒険小説としても楽しめる作品となっていると思います。

最後のシーンでは現実なのか空想なのか分からない世界でアオヤマ少年は自分の気持ちをお姉さんに伝えます。

そのシーンは感動です。

おすすめ「ペンギン・ハイウェイ」でした!

最後に


森見登美彦作品はこれで二作目の紹介となりました。

今期のアニメでは「有頂天家族2」も絶賛放送中と云うことでこちらもお見逃しなく!

それでは今回はここまで(^_^)/~

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

 

おすすめSF作品!夭折の作家デビュー作「虐殺器官」で最高の読書体験を

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若くしてこの世を去った夭折の作家、伊藤計劃

今回は伊藤計劃の処女作にして最高傑作と呼び声高い作品「虐殺器官」について紹介していこうと思います。

文庫本の装丁からこの作品のただならぬ雰囲気が醸し出されています。

表紙の上方を「虐殺器官」と「伊藤計劃」がでドンッと占めており、背景は黒。

シンプルだからこそ、その情報量の少なさからあらゆることが想像可能であり、その潔さに圧倒されます。

本が持つ異様な空気をうまく表現しているんじゃないか、なんて思いました。

内容に関しても、この作品は素晴らしい。

様々な思想を、考えをこの一冊はSFの世界観だからこそ可能な例えや出来事でうまいこと語っている。

これはSF作品だからこその強みであり特徴ですね。

しかしこの作品はそう云ったSF作品だからこそ、と云う部分もさることながらそれ以外の、こと個人に関しての泥臭い思いや冷徹な感情などを異常な状況下と混合する事によって化学反応がおこる部分は素晴らしいの一点です。

こういうフィクションを読みたかったんだな、待ち望んでいたんだな、と思いました。

詳しく説明していきます。

虐殺器官

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

 

9.11以降の"テロの戦い"は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう……彼の目的とはいったいなにか? 大量殺戮を引き起こす"虐殺の器官"とは? ゼロ年代の最高のフィクション、ついに文庫化!

 
と云うのが文庫本裏表紙のあらすじ。

自分自身であらすじを書こうとも思ったのですがどうにも伝えたいことが多すぎて難しかったです(笑)

ここは書くべきなんだけどここを書いたらネタバレになるだろうし、しかしこのフレーズは自分の中で心に残っているから入れたいな、と思って続けていたら、だらだら、だらだらと延々に書き殴って、どんどん駄文になっていって、これはもう無理だな、と思いました。

今回は文庫本裏表紙のあらすじを拝借させていただきました。

それにしても「引用」は楽ですね(笑)

もうこれからあらすじを書くときは「引用」を多用していこうかしら。

と云う訳であらすじでした。

主人公、シェパードの心情の機微、シェペードと対の存在であるジョン・ポールの真の目的とは?

小説の大きな見どころはこの二点でしょうか。

それ以外にも多分の見どころがありますので気になった方は是非読んでみてください。

読んだ感想

 
この作品のテーマなるものを定義づけるのであれば私はこの単語を据えようと思います。

それが「言語」です。

この「言語」の力でジョン・ポールは人の心の深遠に眠るなにかを呼び起こそうとしている。

その結果が「テロル」「戦争」「虐殺」に繋がっているのだと思いました。

私も大学で様々な講義を受けているのですが、その講義を全般的に見て通底している話が「言語」についてなんですよね。

文学部の特にそう云った「言葉」についてなどを学ぶ学科に属していますのでもしかしたら当たり前かもですが、しかし私にとってはとても新鮮でしたね。

特に記憶に残っているのは「英語は共通語なのか否か?」と云うこと。

答えはありませんがおそらく多くの方は「英語は共通語」と思われている方が多いのではないでしょうか?

しかし決してそう一概には「英語は共通語」とは言えないのではないかと云うのが講義の内容の一部。

そもそも「英語は共通語」と云うイメージがここ日本では強い傾向があるんですよね。

けれど実際英語話者の人口を調査してみると多く見積もっても約7億人、少なく見積もったら約3億人。

思ったよりも少なくないですか?

約7億人と云うことは世界の人口が約70億人と云われているので……

なんだ、世界の1割しか話していねぇーじゃねーか!

はい、そうなんです。英語を話したところで世界の半分の人とも話せないんです。

と、余談が続いてしまいましたが、閑話休題

結局云いたいことは「言語」って色々な可能性を秘めているんだよ、ってことです。

その「言語」で世界をどうにかしようとしたのが今作の黒幕ジョン・ポール。

そこに注目していただきたいですね。

いろんなことを考えさせられますよ。

そう云った読書体験がお好きな方にはお勧めかもです。

と云う訳で「虐殺器官」でした。

最後に

 
「言語」についてはいつかブログでも話せたらいいですね。

ノーム・チョムスキーやら井筒俊彦やらが好きなんですよ。

またそれ以外にも文学のお話、読書のお話もしていきます。

ここまで読んでくださった方、有難うございます!

それでは( ´Д`)ノ~バイバイ

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

 

「放課後のゲームフレンド、君のいた季節」こんなラノベがあったのか!

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今回はMF文庫Jから出版されている、むらさきゆきや先生「放課後のゲームフレンド、君のいた季節」について紹介していきたいと思います!

正直この作品を紹介するか否か迷っていました。

と云うのも、この作品に関しては、どの場面、どの内容を説明してしまうだけでネタバレになってしまう恐れがあるんですよね。

ただの青春物語を描いたライトノベルではないんです。

青春ストーリーが進む中、ほんのちょっぴり見え隠れする暗闇。

その暗闇は恐ろしいはずなのにメインに据える主人公とヒロインのストーリーを据えることでうまい具合に軌道修正を行っている。

これは作家の力量が伺えます。

主のストーリーの裏に何か不穏な空気のはらんだ感じです。

感覚的に申し上げると、個人的にこの作品はある作品のようだな、似ているかもしれないな、なんて思った作品があります。

それが芥川作品です。

芥川龍之介です。

芥川の作品も主のストーリーの裏にいくつかの謎が存在しています。

有名な作品に「藪の中」などがありますね。

「藪の中」に関してはいわゆるミドルストーリーなんて呼ばれています。

このラノベを読んで私は意外にも芥川作品を思い浮かべたんですね。

しかしよくよく考えてみると案外通底しているな、と思いました。

何故か?

どこか似ているんですよね。

トーリーを覆っている焦燥感に似た不思議な雰囲気とか。

そして物語の帰結、締め方とか。


芥川作品もこのライトノベル作品も、

どちらも読者が思い描いていた最後とは180度違ったものを用意している。

そしてどちらも決まって読者を良い意味でも悪い意味でも困らせるんです。

詳しく紹介していきましょう!

ぼっち美少女は廃ゲーマー

 
主人公のリオはオンラインゲームの一つMMORPGクロスレヴェリにおいて卓越した反射神経で《上位喰い》の異名を持っていた。


そんなリオはある日妖精のように可憐な容姿を兼ね備えた美少女、観月夢亜と出会う。

しかし彼女は廃ゲーマーで性格には難アリの残念系ぼっち美少女だった!

そんな夢亜に気に入られてしまったリオは彼女と放課後にゲームをするようになった。

夢亜が引き起こす数々のトラブルに見舞われながらも仲良くなっていく二人。

そんな楽しい日常が、ずっと続くと思っていた。けれども彼女には秘密があって――。

というのが本書の裏表紙のあらすじを簡単に加筆修正した内容。

ここからは若干先の話まで話してしまおうと思います。

彼女の秘密と云うのが、

病気。来年には死んでしまう。

しかしその病気は手術で治るらしい。

けれど手術を行う個所は脳なんです。

成功すれば病気は治る。失敗すれば死んでしまう。

それを知ったリオはどうするのか?

リオは夢亜を救うことができるのか?

気になりますね。

読んだ感想

 
この作品の面白いところは何と云っても青春学園トーリーの日常シーン。

リオと夢亜が出会う。

ゲームを通じて仲良くなっていく。

彼女の秘密を知る。

そして決断するリオ。

そんな主要場面の間間に織りなされる日常シーン。

彼と彼女の徐々に変化していく関係性を日常シーンを通して感じていけるってのはこういった青春ストーリーの醍醐味ですね。

徐々に近づいて確固たる関係性を築いていく二人を見ているとページを捲りながらニヤニヤが止まりませんでした。

そして今作一番に驚かされたのは最初の方でも触れた通り、最後の最後、予想だにしないカタストロフが待ち受けています。

ちょっとこれはネタバレでしたかね。ま、いっか(笑)

と云うことで「放課後のゲームフレンド、君のいた季節」の紹介でした!

皆さん読んでみてください!

最後に

 
今回はライトノベルから一作品紹介させていただきました!

皆さんどうでしたか?

それでは今回はここまで!

( ´Д`)ノ~バイバイ

現代作家、鬼才・天才のデビュー作「くっすん大黒」が面白すぎる!

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まさにパンク文学なんて呼ばれている町田康作品の数々。

そんな中から今回は町田康さんの処女作「くっすん大黒」について紹介します!

現代小説でありながら文章からにじみ出るのは近代で活躍した文豪のような空気なんです。

でありながら近代小説では表せられない現代ならではの下らなさが面白い!

詳しく紹介していきましょう!

「くっすん大黒」

くっすん大黒 (文春文庫)

くっすん大黒 (文春文庫)

 

 
三年前に、ふと働くのが嫌になって仕事を辞めた。

それ以降妻のすねをかじって毎日酒を飲むのに明け暮れ、ぶらぶらしていた。

いわゆるヒモ状態。

そんな状態がずっと続いていたら、ある日妻が家を出て行ってしまった。

酒を買う金もない。なにもない。

誰もいない部屋でぶつぶつ一人愚痴を呟く日々が続いた。

そんな誰もいない部屋で不愉快極まりない「大黒」が転がっている。

今日こそはこれを捨ててきてやる!

そうして彼は外に出て「大黒」を捨てるべく奮闘するのだが、何故だか彼はおかしな珍事件に巻き込まれていく。

内容自体はとても下らないことばかりなのだけれどそこが逆に人間ぽいと云うかとても親近感をわくと云うか。

そんな物語をパンクな文章で飾り付けられていて読んでいて気持ちいいんですよ!

読んでいて単純に楽しいのです!

読んだ感想


現代でこんな小説を読めるなんてのは本当に素晴らしい読書体験ですね。

純粋な純文学と云うよりもただただ面白いから笑って可笑しいから笑ってと云う感じの娯楽小説として楽しめるこの作品。

読書が億劫、文章を読んでいることそのものが辟易としてしまう方とかでも、この作品なら読んでこの小説の世界に引き込まれていくのではないでしょうか?

私は終始この作品を読んでいて笑いながらページを繰っていました。

何だかだんだん文章自体に惚れていくんですよね。

文章が本当に面白い!

近代文学的でありながら現代小説の良さを存分に生かしているんです。

だからこそたくさんの読者から熱狂的な支持をもらって、「町田康は文学の新世紀を切り拓いた」なんて云われていたりと、最高の支持を受けています。

そして表題作の「くっすん大黒」以外にも、もう一つの中編作品、「河原のアパラ」こちらも「くっすん大黒」と同じくらい下らなく、なのに面白い作品となっておりますので是非ご一読をお勧めします。

最後に


今回は初めての純文学を紹介しました。

純文学と云っても皆様が思っているような純文学作品とはちょっと違っているかもしれませんが。

しかしだからこそ面白い!

こういう作品は滅多にお目にかかれませんからね!

と云う訳で今回はここまで!

最後まで読んでくださった方有難うございました。

ではでは!( ´Д`)ノ~バイバイ

くっすん大黒 (文春文庫)

くっすん大黒 (文春文庫)