かぴばら先生は語る

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【純文学】おすすめ現代文学! 村上春樹の「羊三部作」文学は青春だ!【読む順番】

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今年のノーベル文学賞受賞者は?

毎年、度々名前が挙がる人物、村上春樹

初めて書き上げた『風の歌を聴け』は群像新人文学賞を受賞。

編集部からの連絡は神宮球場で野球を観戦していた時だったとか、そんな話もある、規格外の人物。

それは作品にも反映されている。

今までにない文学。

そもそもこれは文学、小説と規定できる代物なのか?

今回はそんな村上春樹の処女作『風の歌を聴け』から『羊をめぐる冒険』までの通称「羊三部作」について紹介していこうと思う。

村上春樹「羊三部作」

村上春樹の「羊三部作」は彼の原点的な作品としても有名な三部作である。

「羊三部作」以外にも「鼠三部作」や「僕と鼠もの三部作」、総じて「青春三部作」と呼称することもある。

小説には様々な三部作が存在する。

有名なところでは夏目漱石の前期三部作『三四郎』『それから』『門』

後期三部作『彼岸過迄』『行人』『こゝろ

アニメで言えば高畑勲監督作品。世界名作劇場三部作として

アルプスの少女ハイジ』『母をたずねて三千里』『赤毛のアン

以下、様々な三部作が存在するが一貫してそれぞれその代表的作品群を総称して三部作と称される。

つまり「羊三部作」は村上春樹を知るならばまず初めに読んでおくべき作品たちとも呼べるのである。

ノルウェイの森

世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド

海辺のカフカ

1Q84

など、有名な作品は数あれど、それらを読む前に村上春樹の小説を体感するならば、この三部作を読むべきだ。

そうして村上春樹適性を測るのだ。

往々にして村上春樹作品は賛否が分かれている。

とても素晴らしい! と評する者。

こんなのは文学ではない! と憤る者。

それら適性を測るためにも「羊三部作」は村上春樹の導入にピッタリの作品なのだ。

村上春樹を読んでみたいといった人たちに紹介する。また、そういえば「羊三部作」の順番ってどうだったか、と忘れてしまった方にも参考になれば嬉しい。

1.『風の歌を聴け

風の歌を聴け (講談社文庫)

風の歌を聴け (講談社文庫)

  • 作者:村上 春樹
  • 発売日: 2004/09/15
  • メディア: 文庫
 

一九七〇年の夏、海辺の街に帰省した“僕”は、友人の“鼠”とビールを飲み、介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。二人それぞれの愛の屈託をさりげなく受けとめてやるうちに、“僕”の夏はものうく、ほろ苦く過ぎさっていく。青春の一片を乾いた軽快なタッチで捉えた出色のデビュー作。群像新人賞受賞。

 これは文学ではない。

あらたな表現方法の確立である。

文学や小説と規定するのがおこがましいぐらいに、この作品には今までの固定観念を取っ払ったセンテンスの繋がり、人物造型、独特の描写。

読後感はあらゆる衝撃に打ちのめされるが、しかし内容を読み返していくと、それは決して奇抜なものではない。

とても普遍的で、一般的な印象を受ける。

けれどそれらを総合して読み終わればやはりすごいものを読んだという感想になるのだ。

この世で一番凄いものと言うのは、詰まる所、普通ということなのだ。

普通が一番不思議で可笑しく、恐ろしく、美しいのだ。

この作品を具体的に紹介することはナンセンスである。私の力不足でもあるが、そこは申し訳ない。

しかし、やはりこの作品は読まなければ分からない。

その高揚感は素敵なものだと読んで確かめてほしい。

登場人物は主に「僕」と「鼠」

この二人の物語と言って過言ではない。

過去にこの作品について記事を書いていた。拙い文章だが参考になれば、と思う。

kapibarasensei.hateblo.jp

2.『1973年のピンボール

1973年のピンボール (講談社文庫)

1973年のピンボール (講談社文庫)

  • 作者:村上 春樹
  • 発売日: 2004/11/16
  • メディア: 文庫
 

さようなら、3フリッパーのスペースシップ。さようなら、ジェイズ・バー。双子の姉妹との“僕”の日々。女の温もりに沈む“鼠”の渇き。やがて来る一つの季節の終り―デビュー作『風の歌を聴け』で爽やかに80年代の文学を拓いた旗手が、ほろ苦い青春を描く三部作のうち、大いなる予感に満ちた第二弾。

 前作の『風の歌を聴け』が楽しめたならこちらもおすすめだ。

文体、表現は相変わらず。

これを楽しめないなら、まず村上春樹は諦めた方が良いかもしれない。

世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』に関しては文学を超えてファンタジーとしても読めるので、もしここで挫折したならばそちらを経由して戻るのもありかもしれない。

それ以外にも村上春樹作品にはファンタジーな物語があるが、それらは春樹色が結構強めなので、いきなりそれらを読むときは少しばかりの覚悟を要するかもしれない。

この作品では「僕」の諦めきった感じと「鼠」の暗さ、この対極的な二人が友人という繋がりによってこの小説は成立している。

僕は何を考えるか、鼠は何を考えるか。

最後まで読めばわかるが養鶏場のシーンは今でも印象的である。

『世界の終わり~』などでも似たような高揚を覚えるが、何故だか凄いドキドキする。

一種の冒険小説的なワクワク感があるのだ。

次の作品はまさしく冒険をする。

それも羊を巡った冒険である。

3.『羊をめぐる冒険

羊をめぐる冒険(上) (講談社文庫)

羊をめぐる冒険(上) (講談社文庫)

  • 作者:村上 春樹
  • 発売日: 2004/11/15
  • メディア: 文庫
 
羊をめぐる冒険(下) (講談社文庫)

羊をめぐる冒険(下) (講談社文庫)

  • 作者:村上 春樹
  • 発売日: 2004/11/16
  • メディア: 文庫
 

あなたのことは今でも好きよ、という言葉を残して妻が出て行った。その後広告コピーの仕事を通して、耳専門のモデルをしている二十一歳の女性が新しいガール・フレンドとなった。北海道に渡ったらしい“鼠”の手紙から、ある日羊をめぐる冒険行が始まる。新しい文学の扉をひらいた村上春樹の代表作長編。 

美しい耳の彼女と共に、星形の斑紋を背中に持っているという一頭の羊と“鼠”の行方を追って、北海道奥地の牧場にたどりついた僕を、恐ろしい事実が待ち受けていた。一九八二年秋、僕たちの旅は終わる。すべてを失った僕の、ラスト・アドベンチャー村上春樹の青春三部作完結編。野間文芸新人賞受賞作。

 ここまでくれば君はもう村上春樹が大好きだ。

そしてここまで読んだ者なら辛い物語だとも思う。

「鼠」に辿り着くための物語。羊をめぐる冒険

北海道の牧場を訪れるシーンがあるのだが、個人的にこの場面を読んで島崎藤村の『破戒』を思い出した。

『破戒』では山奥で主人公の父が孤独に牧場を営んでいるという設定だったと記憶している。

そして主人公は父が死んでその山奥の牧場に向かうのだ。

この場面の描写の寂寥感は鋭く胸に突き刺さる。

得も言われぬ悲しさを呼び起こされるのである。

羊をめぐる冒険』でも同じだ。

フワフワとした文体に気を取られるが、この物語はどうしようもなく、泣きたくなるのだ。

私が何を言っているのか、是非この作品を読んで感じていただきたい。

羊をめぐる冒険

羊をめぐる冒険

 

最後に

最終的に読む順番は、

風の歌を聴け』→『1973年のピンボール』→『羊をめぐる冒険』である。

ここに続けて同主人公の『ダンス・ダンス・ダンス』を付け加えても良いだろう。

まぁ、これは参考に、である。

結局はその人の感性に従って読む順番など変えていいと思っている。

正解なんてないのだから。

ここで言っているのは個人的に、こう読めば面白いと思っているだけだ。

新たな面白い読み順があれば教えてもらいたい。

羊をめぐる冒険』から逆に読んでみたなど……

面白そうではないか!

最後に、村上春樹、どうだっただろうか?

平易な文章は一見して読みやすそうに見えるが、それは理解とはまた別なのである。

これほど理解に苦しむ小説もないだろう。

文章は理解できるが、それを俯瞰したときの物語がフワフワと浮遊しているのだ。

しかしそれが村上春樹の味である。

この味を楽しめたとき、君にとっての文学の新たな世界が見えるかもしれない。

ということで今回はこの辺で。

ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)

ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)

  • 作者:村上 春樹
  • 発売日: 2004/10/15
  • メディア: 文庫
 
ダンス・ダンス・ダンス(下) (講談社文庫)

ダンス・ダンス・ダンス(下) (講談社文庫)

  • 作者:村上 春樹
  • 発売日: 2004/10/15
  • メディア: 文庫