恋愛?SF?ちょっと不思議なライトノベル「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」
今回紹介するのは電撃文庫より出版されている鴨志田一先生の青春小説「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」についてです!
鴨志田一先生と云えば有名な作品で云うとアニメ化もされた「さくら荘のペットな彼女」や、最近で云えば話題にもなった「機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ」でちょくちょく脚本のお仕事もされている、SFも恋愛も青春もジャンル問わずお書きになっている実力派の小説家さんです。
そして今作は多種多彩な鴨志田先生ならではと云うか、先述したSF、恋愛、青春、この3つのジャンルを織り交ぜながら独特の世界観を描いた物語となっています。
バニーガール先輩
主人公の咲太(さくた)が図書館にてバニーガール姿で本を読んでいる女性を発見するところから物語は始まります。
まず初めに、この文章を読んで皆さんはどう思いましたか?
「バニーガール? 何言ってるの?」
そう疑問を呈す人もいるでしょう、しかし待ってください!
この物語の出発点でもあり、そして話のさわり、核心でもあるのがこのバニーガール……
正確には何故その女性は多くの観衆の目があるにもかかわらずバニーガールの姿をしているのか。
そして何故、
咲太以外の人たちはそのバニーガール姿の女性を見向きもしないのか
です。
そう、それが今回、この物語の謎であり、咲太が越えなければいけない壁なのです。
女性の名前は桜島 麻衣(さくらじま まい)。
彼女は子役時代からスターの階段を上っていた雲の上の存在。有名な女優さんだそうです。
しかし最近はその女優業も休業しているようで……
思春期症候群
話を少し戻しましょう。
麻衣は何故バニーガール姿に扮していたのでしょうか?
それには理由がありました。
それが、
自分の姿がだれにも認知されなくなっていた
からです。
つまり道行く人たちは麻衣の存在を「いない」ものとして捉えている。
世界から隔絶された本当の孤独、とでも表現すればいいでしょうか。
正しく「空気」になってしまったのです。
そして本当に自分は誰からも存在を認められていないのか確かめるためにバニーガールの姿に扮していたわけですね。
そしてその試みも無駄骨と期してしまった、その時に現れたのが主人公の咲太さんです!
そして咲太さんと麻衣さんが出会ったことによって大きく物語は動き始めます。
なにしろ咲太も似たような奇妙な現象に遭遇していたのです。
所謂「思春期症候群」
麻衣さんの摩訶不思議な現象もこの思春期症候群であろうと咲太は考えます。
そしてこの思春期症候群の裏には様々な思春期特有の悩みなどが絡んできて……
シュレディンガーの猫、観測者効果
この作品のもう一つの魅力と云ったらSF要素です。
先述した「思春期症候群」をこの作品内では古典科学に属されるであろうひと昔前の科学の考え方や現在でもバリバリ現役の量子力学などの理論を当てはめていき不思議と思われる「思春期症候群」を大体の構造だけでも頭で理解しようとしていくのです。
一見理解不能と思われる「誰からも存在を認識されない」と云う現象も
シュレディンガーの猫
と云う思考実験から分かる
観測者効果
と云われる一つの考え方から徐々に全貌が明かされていきます。
読んだ感想
この作品で語られている一番のテーマは人と人との間に、ある時はベタベタと粘着的に気持ち悪く、ある時はすっと通り過ぎていく厭な雰囲気、「空気」についてだろうと思います。
青春小説にはこの「空気」の怖さと云う奴がたいていの場合つきものだと云われていますがこの作品はそれら既存の青春小説とは少々違った怖さがあるのではないだろうか、と思いました。
それがただ学生生活内でのいざこざ、いじめ、息苦しい交友関係だけでおさまっていたら、それは順当に今迄の青春ストーリだと思います。
しかしこの作品はその青春の怖さと付随するように自分の力ではどうしようもない絶対的な立場からの鉄槌と云うものが加えられています。
その絶対的な立場と云うものがこの作品で云う「思春期症候群」です。
ただの怖さじゃない、それは畏怖のようであり、しかし現実的な残酷さ。
この作品を読んで色々なことを考えさせられました。
ライトノベルだからと云って侮ってはいけませんね(笑)
と、まあ、ここまでなんだかんだずっと重く暗い雰囲気で語ってしまい、「ええ、何だか読むのやめようかな」と思ってしまったみなさん、申し訳ありません!
撤回させてください!
そりゃあ暗いシーンも胸にグサグサ来る言葉とかもあるのは事実ですが本筋はとても爽やかな青春小説です!
舞台は鎌倉! 江ノ電やら七里ヶ浜の海やら爽やか要素はてんこ盛りです!
そして感動ストーリーでもあります!
ラストシーンは必見です!
また、この物語、この一作では終わらずにシリーズ化も果たしています!
現在は既刊7巻。ちょうど一つの物語が一区切りついたところで読み始めるには絶好のタイミングです!
興味を持たれた方はぜひ読んでみるといいかもしれません。
最後に
いやはや2回目の投稿です!
今回もこんな駄文に付き合ってくれた方がいましたら有難うございました。嬉しい限りです。
それでは今回はここまで!
またお会いしましょう(^_^)/~