埼玉愛にあふれた作品「埼玉県神統系譜」はもう一度読みたくなる作品なんです!
今回は中村智紀先生「埼玉県神統系譜」について紹介していこうと思います。
この作品は第9回小学館ライトノベル大賞ガガガ賞受賞作品であり、その肩書だけで実力のほどが伺えるんじゃないでしょうか。
ガガガ文庫と云えば「やはり俺の青春ラブコメは間違っている。」や「俺、ツインテールになります。」など中々に個性あふれるレーベルとなっており、今回の作品もそれら作品と遜色ないくらいに、いやそれ以上に個性的な作品となっております。
私がこの作品と出会ったのは何とはなしにガガガ文庫のホームページを見ていて、そこで「ガガガ賞受賞作」なる文句で宣伝されたこの作品を見つけたのが、最初だったでしょうか。
まず目に入ったのが表紙の絵。
あまりイラストレーターさんに関しては詳しくないのですが(有名どころでabecさんやかんざきひろさんぐらいしか知りません)shimanoさんと云うイラストレーターさんがお描きになっているようで、まずそのイラストに興味を持っちゃいましたね。
凡庸な言い方になってしまいますが、とても綺麗なんですよ。
様々なイラストを拝見させていただいた私の観点(素人目)から言いますと味があるというか、共感を持てるというか、何だか寄り添っているようなイラスト(何言っているんだ……)
うーん、言葉にするのは難しいですね。
しかし本当に素晴らしいイラストなんですよ。
派手さはありませんが、地味ともまた違う、と云うか……
まあ、イラストに関しては皆さんの目で確かめてくれればと思います。
そしてイラストの次に私に興味を抱かせたのは……
埼玉県神統系譜
神様が出てくるのです!
私はそこに惹かれました。
何と云うかね、前々回の記事だったかな? そこで「いなり、こんこん、恋いろは。」について紹介したと思いますが、おそらく私はその作品のせいで神様やら、やれ神社やら、やれ日本神話やらと云った話が好みになってしまったようで……
事実、今現在でもその興味は衰えることを知らずに大学でも日本神話についての講義を取ったりと、とある一つの漫画から派生した興味がどんどんマニアックな、専門的な領域に達しそうです(笑)
そしてそんな神様などに興味を持った時期と「埼玉県神統系譜」と出会った時期とが巡り巡って巡り合ってしまったわけです。
「え? 神様? 神社が舞台? それなら買わなくてはいけないな!」と勢いそのままに書店に向かったことを今も鮮明に覚えています。
面白いぞ、この作品は!
あらすじ
高校二年生の夏、主人公である立花 孝介(たちばな こうすけ)は実家の神社を継ぐつもりで一切進路のことなんか考えていなかった。
しかしそんな孝介に父はとんでもない突然のカミングアウトを告白する。
「うちの神社は今、倒産しかけてんぞ?」
てっきり実家は中流家庭の上くらいのものだと思っていたのが、なんだかんだで結構貧乏であった事実を告げられる。
神社が倒産すれば孝介の進路は、将来は。
もう終わりだ、この世の終わりだ!
そんな折、現れたのが狐の仮面をかぶる謎の女性。
その人こそが我らが救世主、神様であったのだ!
腐れ高校生
腐れ学生を描く名手と云えば私なんかはパッと森見登美彦さんなどが頭に浮かびます。(もしかしたら近代文学で漱石とか、作品によってはそこら辺を連想する方もいるかもしれませんが)
そしてそんな森見登美彦さんの作品にこの「埼玉県神統系譜」はなんだか似ているんです。
と云うのも文体からちょっと似ているというか、どちらも文体が文語調なんですよ。
それでキャラクターも通底するところがあります。
それこそが「腐れ学生」です。
この作品の主人公もまあ、腐れです。もう腐っています。発酵してチーズになるんじゃないかってくらいに腐って……、そこまではいかないか。
ですからもし森見登美彦さんのような作品を読んでみたいな、って方にはお勧めかもしれません。
しかし何だか森見登美彦さんの文体とか物語って独特過ぎてちょっと理解できないって方もいらっしゃると思います。
実際森見登美彦さんの作品は面白い人には面白いけど、本当に理解できない人には理解されないらしいです。
賛否両論の振り幅が大きいというかなんというか。
けれど今回のこの作品はそんな方にこそ読んでもらいたい作品です!
出自がライトノベルレーベルと云うことで物語も構成もしっかりしている上に理解しやすく読みやすい。それでいて文体が苦手と云う方もそれがかえってスパイスになってうまい具合にサクサク読めてしまうかもしれません。
ぜひ読んでみてください。
読んだ感想
この作品、雰囲気がいいんですよ。
舞台は片田舎で、季節は夏。
嗚呼、何だか蝉の鳴き声が聞こえてきませんか?
読んでいて昔日の夏休みを思い出す、そんな感じです。
夏って現実世界じゃあただただ暑いだけなのに何故だか小説で読むと夏が恋しくなるんですよね。
そんな感慨にふけれる作品ですよ。
そして青春物語。
ほんと、くだらないことをやっているなあ、なんて思う描写が多々あるんですがそこがまた読んでいて面白い。
くだらないこと……
余談になってしまうんですが結局なんだかんだそう云うくだらないことをやる時間って現実ではほとんど無いですよね。
そう云う時間ってちょっと考えてみると、大切なんじゃないかしらって私なんかは個人的に思うんです。
「くだらないことなんかやる暇があったら~」なんて云うのは常套句ですがそもそもくだらないことを何でやってはいけないんでしょうか?
誰か偉い人が規律したのでしょうか?
いいえ、違いますよね。
人と人との間に流れる一般常識と云う名の空気がそれはくだらないことなんだ、やっても意味が無いんだから、と無意識に理解させているんです。
どうでしょう? その行為を本当に完全に十割の確率で意味が無いなんて云えますでしょうか?
得てして一般的に言われるくだらないことと云うのは単純に理解できないことをブラックボックスとしてくだらないこととして収束しているだけなんです。
エジソンの研究が最初から認められていたわけではありません。
宮沢賢治に至っては生前での作品評価は皆無です。賞賛されたのは宮沢賢治が亡くなってからのことなんです。
それらは今は認められて高い評価を受けているものばかりですが、評価を受ける前はどうでしょうか?
くだらないことなんじゃないですか(笑)
つまり一概にそれはくだらないことだ、と断定はできないわけです。
なんてもっともそうな事を云っていますが結局これは言葉のレトリックで、言葉の綾なんですけど(笑)
話が大きく脇道に逸れ過ぎました、すみません。
結局一番云いたい事はくだらないことをする時間はないけど、くだらないことを読む時間はあるんじゃない? ってことです。
皆さんもくだらないことを読んでみませんか?(何だか語弊のある云い方ですね。作品の内容は素晴らしいですよ!)
何度も云うようですがこの作品、本当に面白いんです!
最後に
今回は最後の方、大きく脇道に逸れてしまいましたが、そこはどうかご勘弁を!
あまり自分の意見を大々的に表には出したくないのですが、今回はなんだかそんな気分だったようですね
それでは今回はここまで(^.^)/~~~