あの頃、私は「君の膵臓をたべたい」という本を手に取った。そして読んだんだ
文庫もされ映画化も決まり本屋大賞にもノミネートされ今や絶大な人気となった作品。
何と云ってもこのタイトル!
「君の膵臓をたべたい」と云うインパクト大なタイトルを一度見たら忘れられないはずです。
そんな作品ですが私がこの作品と出会ったのは回顧するともう約二年の時間が過ぎ去りました。
学校での休み時間などを使って読む本とは別に自宅で朝食を食べ終えて学校に行くまでの僅かな時間を使って読んだ「キミスイ」
最初はよくある青春小説、恋愛小説だと思っていた。
実際読んでみればそんな陳腐な言葉では片付けられないほどに爽やかで掛け替えない愛おしい小説だった。
カーテンを通して薄っすらと透き抜けてきた朝の陽光。鳥の囀りを背景音楽に1ページ、1ページフィクションと云う名の命を捲りながら……私は当時読んでいました。
なんてクサい描写はさておき(笑)
しかしそんな読書をしていたからなのか、それとも内容がそれほどに素晴らしかったのか、どちらにしても「キミスイ」と云う作品が私の記憶に強い印象を残したのは事実です。
そんな事実を踏まえればこの作品には惹かれる要素があるのは自明です。
そしてその惹かれる要素、私にとってその要素は「救い」でした。
私はどこかでこの作品を通して救いを求めているんだと思います。
内容はどうなのかはあえて云いませんが、しかしあなたもどこかで思うはずです。
この世界にはまだ救いがあるんだって。
しかしそれはただの「救い」じゃなくて。
一見してこの作品には「救い」はない。しかし私はそこに「救い」を見出したんです。
恋愛じゃない。友情じゃない。この作品はそれらを一つ一つ提示しているんじゃない。
それらすべてを覆って語っているんです。
皆の救いであり「幸せ」を。
詳しく説明していきましょう。
「君の膵臓をたべたい」
ある日、高校生の僕は病院で一冊の文庫本を拾う。タイトルは「共病文庫」。それはクラスメイトである山内桜良が綴った、秘密の日記帳だった。そこには、彼女の余命が膵臓の病気により、もういくばくもないと書かれていて―。読後、きっとこのタイトルに涙する。「名前のない僕」と「日常のない彼女」が織りなす、大ベストセラー青春小説!
山内桜良はクラスの中でも人気者で「僕」とは到底立つべき舞台が違う。いや、「僕」は舞台にすら立っていない。
そんな二人。
物語は曇天の空、彼女、山内桜良の葬儀の場面から始まる。
クラスメイト達は銘銘葬式に参列しているのだろう。
しかし「僕」は自室のベットに寝転びながら文庫本を読んでいた。
読み終わる頃には夕方でその時間を知らせる電話が鳴る。
電話はなんてことない母からのものだった。
通話を終え、「彼女」に送ったメールの存在を思い出す。
「君の膵臓を食べたい」
彼女はこれをどのように受け取ったのか。そもそも読んでいるのか。
もう答えてくれる人物はいない。
彼女は死んだのだ。
と云う感じで(こんな文章は小説にはありませんよ。私が伝わりやすいようにそれっぽく書いてみたんです)プロローグが終わります。
そう彼女が死んだことは前提条件であり結果なのです。
前提なのに結果っておかしいですね(笑)
そんな寂寥感漂ったプロローグから次に図書室の場面で山内桜良と「僕」の会話のシーンが続きます。
遂に青春物語の始まりと云った感じ。
しかし物語が進んでいくとなんというか既存の青春小説のような爽やかさとは一種異なった青春ですね。
爽やかは爽やかなんですか、既存のものよりも個人的に憧れる様な描写があったりと、なんていうんですかね、そうですね……
大人の爽やかさ、とでも表現しましょうか。
そんな雰囲気を纏っているんですね。
それが読んでいて心地好いんです。
そしてなんといっても山内桜良と「僕」、二人の関係性がとてもいい。
近過ぎず、遠過ぎず、知らないようで、核心をつく、不思議な関係性。
淡白だった二人の物語を徐々に色づかせていく瑞々しい時間。
ときに時間は蟠りを緩和して、ときに時間は関係性を強めて、ときに時間は残酷なことを突然知らせてくれる。
読んだ感想
青春小説の特殊性とはつまりあの時にしかできなかった事、あの時にしか感じられなかった気持ち、あの時にしか味わえなかった環境。
それらを思い出させてくれたり出来なかったからこそ代わりにやってくれたり、そんな感覚を味わせてくれるのが青春小説だと思っています。
しかしこの作品はただの青春小説ではないんです。
この小説は所謂青春時代で「命の儚さ」を語っているんです。
命なんて人生のテーマですよ!
そんな永遠のテーマを青春にぶつけてくるなんてのはかなりの実力を要していないと「結局この小説は何を語りたいの?」となってしまう訳です。
しかしこの小説はそこをうまく綺麗に描いているんです。
それに「僕」と云う人物にあまりパーソナリティを与えなかったのも素晴らしい点です。
これを個性溢れる、例えば物事に対して情熱を持って皆を引っ張っていく、みたいなそんな人物だとこの小説は破綻してしまう訳です。
命を語りながら、恋愛を語りながら、青春を語りながら、それらを一挙に語るのは今となってはこの「僕」でしかいないと思います。
淡々とした語りでありながら山内桜良に触発され徐々に変化していく心情。
予定調和を嫌い、ご都合主義を払い除けたこの作品。
最後の最後、終盤では驚きとともに涙が滴ることでしょう。
是非読んでみてください!
最後に
「君の膵臓をたべたい」、すごい人気ですね。
作者さんの住野よるさんは他にも続々と作品を上梓しています。
最近では『か「」く「」し「」ご「」と「』が上梓されました。
とても気になりますね。
と云うことで今回はここまでです。
ここまで読んでくださった方有難うございます。
バイバイ(^_^)/~