かぴばら先生は語る

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小説、アニメ、マンガ、文学からエンタメまで色々と話せたらと思い、ブログを開設。興味のある方はぜひご覧になってください。

乃木坂46 4期生主演ドラマ配信中! 西加奈子の初期短編小説『サムのこと 猿に会う』をおすすめ

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乃木坂46の4期生をご存じだろうか?

日テレで4期生の番組『乃木坂どこへ』も放送され(※春から新シリーズ決定!)

最近は4期生最新曲『I see…』のSMAP感でも注目された!

今、最もフレッシュで勢いのある彼女たちが遂に主演のドラマまで演じることになった。

それも西加奈子の初期短編『サムのこと』と『猿に会う』を原作にしたドラマである。

私は今まで西加奈子の作品を読んだことが無かったのでこれを機に読むことにした。

ドラマと合わせて上記の短編集が小学館文庫から上梓されたこともありがたい。

と言いながら、まず初めに読んだのは彼女の代表作『サラバ!』なのだが……。

この『サラバ!』が途轍もなく面白かった! ので続けてこの短編集も読むことにした次第である。

結果から言うと、面白かったね!

短編を面白くするのは結構難しい。

短い物語の上でどのように内容を膨らませ、完結させていくのか、これが極めて難題なのである。

この作品に関してはミニマムな物語なのに一気に作品の世界にのめり込んで、すぐに読み切ってしまう、という経験に陥る!

あと、作品に漂う空気感がとても絶妙なのだ!

これはもしかしたら西加奈子作品特有の空気なのかもしれないが、これが本当に心地よい!

今まで西加奈子を読んできて来なかったのが恥ずかしいほどに、私は後悔している。

そんな西加奈子作品を読んでこなかった同志諸君! このブログを読んで少しでも興味を持ったら読みたまえ!

一番のおすすめはすぐにでも読めるこの短編集だ!

ということで本題。ここからその短編集について少し紹介したいと思う。

『サムのこと 猿に会う』

サムのこと 猿に会う (小学館文庫)

サムのこと 猿に会う (小学館文庫)

 

そぼ降る雨のなか、様々なことが定まらない二十代男女5人が、突然の死を迎えた仲間の通夜に向かうところから始まる『サムのこと』。二十代半ばの、少し端っこを生きている仲良し女子3人組が温泉旅行で、「あるもの」に辿り着くまでを描いた『猿に会う』。小説家志望の野球部の友人と、なぜか太宰治の生家を訪ねることになった高校生男子が、そのまま足を伸ばした竜飛岬で、静かに佇む女性に出会う『泣く女』。人生の踊り場のようなふとした隙間に訪れる、「何かが動く」瞬間を捉えた初期3作を新たに編んだ短編集。

『サムのこと』

 『サムのこと』は5人の男女が友達のサムの通夜に参加する話。

ただそれだけの話なのだが、けれど読んでいてとても心地よい気持ちにさせてくれた。

雰囲気がとても不思議な作品。通夜という静かな空気の中で、5人の男女はその場の雰囲気に全然似つかわしくない。そのアンバランスさが、けれどとても普通なのだ。

なんというかその場に馴染んでいないのに、こんな奴らいそうだよな、と思わせる、ちょっと面倒くさがりな5人。

通夜に参加した5人はそれぞれに死んだサムについての思い出を話し始める。

そう、サムは相当しつこくて、面倒くさい奴だった。

 面倒くさがりの5人の中でサムだけが空気を読めなかった。

夏に海に行こうという事になるのだが、5人は行くのがだんだんと面倒くさくなって行くのが嫌になった。けれどサムだけは最後まで「海、行こうやー、楽しいで?」としつこく言い続けた。

結局、海には行かなかった。

サムだけが5人の中で違う人間だった。

何でサムは5人の仲間内にいたのか?

5人の中でサムだけが変な奴だった。 そういうお話。

『猿に会う』

20代半ばで浮かれた話もない少し端っこを生きる女子3人。まこ、きよ、さつき。

ある日3人で電車に乗って占いをしている喫茶店に赴いた。

3人はアキラという女性からそれぞれ見当違いな占いの結果を聞かされる。

きよちゃんはこの占いを私たちの顔の特徴で、適当に言ったんじゃないのか、と疑問に思ったようだ。

実際どうだったのかは分からない。

その後、毎年恒例の旅行で日光に行くことになった。

占いのことなんか忘れて、けれどスピリチュアルな聖地として有名な日光に行くという、結局彼女たちはそういったまじないごとが好きなのだ。

日光で彼女たちは何を経験するのか? 何を感じるのか?

彼女たちはそこで「猿に会う」のだ。

『泣く女』

最後の短編。

小学生から一緒に野球をしていた二人の男子。

高校生、最後の野球も引退し、二人はそれぞれの道に行く。

ノリオは推薦が決まり大学でも野球を続ける。しかし堀田は小説家を目指すらしい。

ノリオは今まで一緒に野球をしていた堀田が全く予想だにしなかった方向に向かったしまうことに少し裏切られた気持ちを抱いてしまう。

そんな彼らは卒業旅行で青森に行くことになった。

ノリオは東京に行くつもりだったのだが堀田が太宰治の故郷に行きたい! という事で結局、青森旅行になってしまった。

堀田のかばんには太宰の『津軽』という小説が入っている。

激しい雨の中、彼らは竜飛岬に向かう。

そこには一人の泣いている女が、、、

彼らが新たな道を歩く少し前の、ちょっとした話。

読んだ感想

それぞれの作品が小さな世界でとても愛おしい物語を紡いている。

何のことはない、感動したり、衝撃を受ける事はなにもない。

けれどこれがどうしようもなく愛おしく感じる。

誰かの日常を覗いているような感覚だろうか?

ああ、ここに人がいる、人が生きているんだ、って思える作品だ。

私は小説を読んでいて、この物語はフィクションなんだ、と結局思ってしまうことが度々ある。

けれどこの短編集の登場人物たちは世界のどこかにいるんじゃないかと思わせてくれる、それほどに自然な人たちだった。

壮大な物語でも、感涙する物語でもない。

しかし、たまにはこんな作品も読んでみるのも良いんじゃないだろうか?

ちょっとした息抜きにでも。

ドラマ『サムのこと』、『猿に会う』

それぞれ原作小説と設定が違うので、ドラマはドラマで楽しめる。

特に『サムのこと』は5人の男女→5人の女子アイドルグループになっている。

原作では5人の男女+サムで6人だったのが、ドラマではサム合わせて5人になっている。

またドラマ用にそれぞれ登場人物の物語が加わっており、見応えもあった。

雰囲気は通夜という事もあり、結構暗いのだが、ドラマの最後に流れる『I see…』のハイテンションな曲調が良いバランスでドラマを盛り上げている。

続いて『猿に会う』も少しだけ設定が変わっている。

20代半ばの女子3人の設定が現役大学生の女子3人に変わっており、乃木坂4期生のフレッシュさが前面に押し出されている印象である。

内容は基本的に日光がメインで小説よりも日光の描写が多い。女子3人が旅を楽しむ様が小説よりもより一層楽しく描かれている。

ドラマはドラマで小説とは違った表現がされている箇所が多々あるので是非こちらも確認していただきたい。

それぞれ1話だけYouTubeで配信されています。それ以降はdTVで配信されています。


【公式】dTVオリジナルドラマ「サムのこと」第1話〈乃木坂46 4期生出演!〉


【公式】dTVオリジナルドラマ「猿に会う」第1話〈乃木坂46 4期生出演!〉

最後に

乃木坂のドラマが気になって西加奈子を読み始めて、最終的にハマってしまう。

乃木坂から西加奈子へ。

不思議なご縁もあるものだ。

西加奈子の『サラバ!』についてもいつか紹介できたらと思う。

あと、西加奈子作品でおすすめの作品がありましたら是非教えてくだされば幸いです。

それではこの辺で。

サムのこと 猿に会う (小学館文庫)

サムのこと 猿に会う (小学館文庫)